ナノファイバーボール~3次元エレクトロスピニングの可能性
ナノファイバーで”張り子”
アルギン酸ハイドロゲルで作製したビーズに,エレクトロスピニング法でナノファイバーを吹き付けることで中空構造のナノファイバーボールを作成することに成功した。本手法を用いると自在にさまざまな3次元形状のものをつくることができる。(3D-Electrospinning)
鋳型としての風船等の周りに和紙を張るという,古くから親しまれている「張り子」(Papier Mâché)にちなんで,この技術で作成した構造体を「Nanofiber-Mâché Ball」と命名した。
3次元構造体の作成に応用
エレクトロスピニング法で球状の立体構造を作成するという技術はこれまで報告がなかった。作成した中空構造体は,嚢胞(ニキビなどの中空の組織構造)を模倣したような培養材料として使用でき,生体応答の研究などへ応用できる。
これまでは,エレクトロスピニング法では平面シート,せいぜいチューブ状のものまでしか作製できなかった。本技術を用いると,鋳型となるゲルビーズの形を変えることによって,自由な3次元構造体を作成することができ,ナノファイバー加工の可能性を大いに切り拓く技術として期待される。
参考文献
W.-Y. Huang, N. Hashimoto, R. Kitai, S. Suye, S. Fujita, Nanofiber-Mâché Hollow Ball Mimicking the Three-Dimensional Structure of a Cyst. Polymers 2021, 13(14), 2273. https://doi.org/10.3390/polym13142273
藤田聡, W.-Y. Huang, 三次元構造体の製造方法、三次元構造体、および細胞培養用足場材, 特願2021-111134