世界初!コラーゲンハイドロゲル繊維

困難だったコラーゲンのナノファイバー化

コラーゲンは生体を構成する重要な構造タンパク質。再生医療などの組織修復の足場となる材料で,古くからハイドロゲルとして利用されてきた。生体の組織は一方向に揃った異方性のある構造をしており,コラーゲンを用いてそのような異方性のある構造を作成する技術が望まれていた。


コラーゲンは溶媒や熱などによってゼラチンと呼ばれる構造にすぐに変性してしまう。この論文ではコラーゲンを変性させずに,水系溶媒を使ってエレクトロスピニングしてナノファイバーを得ることに世界で初めて成功したことを報告。これによって,ハイドロゲルナノファイバーをコラーゲンで作製することができ,一方向に揃ったシートにしてその上で細胞を培養することで,細胞を同じ方向に揃えて配列させることができた。この手法は組織修復の新しい基盤技術として期待される。


芯鞘エレクトロスピニング法の利用

ここでは芯鞘エレクトロスピニング法という手法を利用。2層のノズルを用いて,内側にコラーゲン水溶液を,外側にポリビニルピロリドン(PVP)という繊維化させやすい水溶性ポリマーを流した。繊維を得てからコラーゲンをゲル化させ,さらに外側のPVPを洗浄除去するという方法でコラーゲン単独のナノファイバーを得ることに成功した。本手法は,長年不可能だったコラーゲンをゼラチン化させずに繊維化させる方法として,画期的なだけでなく,繊維化しにくい他のポリマーなどにも応用可能な汎用性の高い技術である。





参考文献

Y. Wakuda, S. Nishimoto, S. Suye, S. Fujita. Native collagen hydrogel nanofibres with anisotropic structure using core-shell electrospinning. Sci Rep. 8, 6248 (2018). https://doi.org/10.1038/s41598-018-24700-9高引用論文


藤田 聡, 西本昇平, ハイドロゲル繊維の製造方法, 特許第6521738号