薬剤の超スロー放出の実現

DDS材料としてのナノファイバー


薬剤を材料などに取り込ませ,ゆっくり放出させるようなしくみをDDS(drug delivery system)という。ナノファイバーは伸縮性や多孔性があることから創傷被覆剤などへの応用が期待されており,ここにDDS機能を付与することが望まれている。


しかし,そのまま薬剤を染み込ませるだけでは,薬剤が数時間というオーダーであっという間に放出されてしまう(これをバースト放出という)。これは繊維径が細くなるほどに重量あたりの表面積(比表面積)が大きくなり,薬剤が拡散で放出されやすくなるためである。


芯鞘エレクトロスピニング法による薬剤の放出制御


この問題を解決するために,芯鞘エレクトロスピニング法が利用できる。親水性のコアに薬剤を担持させる。その外側を生分解をもつ疎水性ポリマーのシェルで覆ったナノファイバーを作製し,薬剤の放出挙動の動態解析をおこなった。


これにより,外側のシェルの生分解されるまでの数か月にもわたる非常に長期間にわたっての薬剤のリリースが可能となる。



参考文献


W.-Y. Huang, T. Hibino, S. Suye, S. Fujita, Electrospun collagen core/poly-l-lactic acid shell nanofibers for prolonged release of hydrophilic drug. RSC Adv., 11, 5703-5711 (2021). https://doi.org/10.1039/D0RA08353D