接着した細胞をそのまま凍結保存する
細胞の凍結技術
再生医療を実用化にもっていくためには細胞の輸送や保管技術の確立が不可欠。とくに長期間細胞を保管するためには凍結技術が必要である。
細胞の凍結は,液体窒素(-196℃)のタンクを使っておこなわれている。そのためには増殖している細胞であっても一旦剥がし,バラバラの懸濁液にした状態にして保存する必要があった。細胞が生存するためには接着し,伸展しなければならないためである。
細胞が凍結・融解するときに収縮の張力がかかり,細胞が破損してしまう。このため細胞を接着させたまま凍結させることはできなかった。
ナノファイバー上での細胞の直接凍結
これに対し「ナノファイバー上で培養し接着・伸展させた細胞はそのまま凍結させることができる」ことを筆者らは世界に先駆けて発見した。
ナノファイバー自体が細胞伸展に必要な張力と同程度の張力で支えられているために,凍結・融解時のストレスをナノファイバーのしなやかさが吸収する。この効果は,凍結温度以下のガラス転移温度(Tg)を有するポリマーでつくったナノファイバーで顕著になることも見出した。
参考文献
O. Batnyam, S. Suye, S. Fujita, Direct cryopreservation of adherent cells on an elastic nanofiber sheet featuring a low glass-transition temperature, RSC Adv., 7, 51264-51271 (2017). https://doi.org/10.1039/C7RA10604A
藤田聡, 松村和明, 細胞組織凍結用のナノファイバー基材, 特願2014-079207