ゲルで胆管を押し広げる

胆管ステントとは


胆管とは胆嚢と十二指腸をつなぐ管で,消化液の通路となる。胆管がんなどでここが閉塞することがあり,これを押し広げるための「胆管ステント」という医療デバイスが使用されてきた。胆管ステントは再閉塞の問題もあり,抜去して入れ直すことができるような材料が求められている。


ゲルの膨潤力で拡張する


ここではポリビニルアルコール(PVA)のハイドロゲルが浸透圧で膨潤していくメカニズムに着目し,消化液を吸って徐々に膨潤していき,胆管を拡張するという「ハイドロゲルステント」という新しいタイプの医療デバイス開発に挑戦した。


開発した材料の物性を評価したところ,胆管を押し広げるのに十分な拡張力を有しており,胆管ステントの実現の可能性を示した。デバイス形状の最適化や至適材料の選定など課題はまだまだあるが,まったく新しいタイプの医療デバイスとして実用化が期待される。




参考文献


Y. Nagakawa, S. Fujita, S. Yunoki, T. Tsuchiya, S. Suye, T. Itoi, Self-expandable hydrogel biliary stent design utilizing the swelling property of poly(vinyl alcohol) hydrogel. J. Appl. Polym. Sci., 137, 48851, 9p (2020) https://doi.org/10.1002/app.48851