DNAの二本鎖をゲル化に使う

ヒアルロン酸


ヒアルロン酸は生体中に豊富に存在する多糖。生体との親和性も高く,化粧品などで広く利用されているだけでなく,再生医療において細胞を保持する足場材料として注目されている。ヒアルロン酸は水に溶けやすい材料であるため,細胞培養などで使用するためには体液で溶けてしまわないように,架橋というプロセスで水に不溶な高分子ネットワーク構造を形成させる必要がある。


これまでは,架橋方法として,側鎖のカルボキシル基にアクリル基などの反応性の高い官能基を導入する方法が用いられていた。しかし,生体中で使用するにはより安全性の高い架橋方法が望まれている。


相補的DNAのハイブリダイゼーションによる架橋


そこで安全な架橋方法としてDNAを使った化学架橋を考案した。DNAは互いに相補的な二本鎖で構成されている。これらをそれぞれヒアルロン酸に結合させておく。架橋したいときは両者を混合すれば,DNA同士の自発的な相互作用が分子間に形成され(ハイブリダイゼーション),架橋されるためにハイドロゲルが得られる。


DNA分子を使った架橋なので,安全性は高いうえ,反応は高い特異性を有しており,特定の酵素で切断することも可能。





参考文献

S. Fujita, S. Hara, A. Hosono, S. Sugihara, H. Uematsu, S. Suye, Hyaluronic Acid Hydrogel Crosslinked with Complementary DNAs. Adv. Polym. Tech. 1470819, 7p (2020) https://doi.org/10.1155/2020/1470819