芯鞘エレクトロスピニングによる材料の表面改質
ハイドロゲル+ナノファイバー
酢酸セルロースナノファイバーの表面に,プロテインAというリガンドタンパク質を固定化したポリビニルアルコールの層が形成された芯鞘型のナノファイバーを,エレクトロスピニング法というワンステップのプロセスで迅速・簡便に作成することに成功した。
プロテインAは抗体分子と特異的に結合する性質を持つ。そのため作成したナノファイバーは,抗体分子を効率良く捕捉できる。この特性は,抗体の製造プロセスで精製に用いいられるアフィニティクロマトグラフィーに適した性質であり,抗体精製などへの応用が期待される。
繊維1本1本の表面にタンパクの水和層を形成
従来より,タンパク質をナノファイバーに固定化する表面改質技術については,様々な方法が知られている。それらは多段階の化学反応プロセスを必要とする煩雑なものであった。ハイドロゲル中に包埋するという手法も多く知られている。
本論文で開発した手法は,ナノファイバー1本1本の表面にハイドゲル薄層を担持するという方法で,これによりナノファイバーが本来もつ通液特性の良好さだけでなく,ハイドロゲルがもつ水との親和性の高さ,すなわち担持したタンパク質が安定に存在し機能するために必要な水環境をも提供することができる。しかもこの構造の作成はワンステップで可能で,多段階の化学処理を必要としない。
昨今,効率よいアフィニティカラムとして,膜を多層に積層したメンブレンクロマトグラフィが注目されている。今回作成した,タンパク質を担持したハイドロゲル層を表面に有するナノファイバーから構成されるシートは,メンブレンクロマトグラフィの基材としての利用も期待される。
参考文献
C. Naganuma, C, K. Moriyama, S. Suye, S. Fujita, One-Step Surface Immobilization of Protein A on Hydrogel Nanofibers by Core-Shell Electrospinning for Capturing Antibodies. Int. J. Mol. Sci., 22, 9857, 12p, 2021. https://doi.org/10.3390/ijms22189857
藤田 聡, 森山 幸祐, 和久田 弓加, 西八條 正克, 水口 和信, 芯鞘型複合繊維, 特願2018-065490 (2018)