セルロースナノファイバーをエレクトロスピニングで束ねる
セルロースナノファイバー(CNF)
植物の丈夫な構造はセルロースという多糖から成っている。セルロースの強度は,高い結晶性によります。木材やパルプをうまく処理すると,この結晶状態を保持したまま,直径が数10~数100 nmという,非常に細い繊維材料が得られる。これをセルロースナノファイバーといい,次世代の材料として近年,注目されている。和紙をほぐした繊維がさらに細かくなったものをイメージすると近い。
天然材料由来でありながら高い強度をもつことから,マイクロプラスチック問題など環境に対する課題が浮き彫りになってきた合成高分子に代わって,構造部材やフィラー材料等への利用が研究されている。
すぐれた材料でありながら,単純に他の材料と混ぜるだけでは十分な効果は得られない。いったんほぐして作ったセルロースナノファイバーですが,これを繊維を揃えて束ねることができれば,さらなる高強度が期待される。
本研究ではセルロースナノファイバーを束ね,丈夫な繊維束に再構成することに成功した。
エレクトロスピニングによってCNFを束ねる
ここでもエレクトロスピニングを用いることができる。
エレクトロスピニングは,ポリマー溶液からナノファイバーを得る技術ですが,ここではポリエチレンオキシド(PEO)というポリマーを利用した。セルロースナノファイバーをPEOと混ぜてからエレクトロスピニングすると,PEOのナノファイバーが得られる,この内部でセルロースナノファイバーも繊維の軸方向に揃って射出される。
セルロースナノファイバーは揃うことで,互いの分子内部の水素結合により高次構造を形成し,一層丈夫な繊維が形成される。これをバンドル化という。バンドル化によって,PEOナノファイバーの機械的強度が著しく向上することを示した。
これまでセルロースナノファイバーをこのように揃えて高強度の材料を得ることはできなかった。この技術を使えば,バンドル化が可能となり,セルロースナノファイバーの応用に欠かせない技術となることが期待される。
参考文献
M. Yamagata, H. Uematsu, S. Suye, Y. Maeda, S. Fujita, Bundling of Cellulose Nanofibers in PEO Matrix by Aqueous Electrospinning. J. Fiber Sci. Technol. 77(9), 223-230, 2021. doi: 10.2115/fiberst.2021-0024
藤田聡, 山形美結, 複合繊維、その製造方法、および繊維製品, 特願2021-124469