ナノファイバーの多孔性を制御する

 

メソポーラスナノファイバー


数十 μm程度のサイズのポアから成る多孔質(メソポーラス)のポリスチレンナノファイバーの紡糸に成功した。ポリスチレンの微細繊維へのこのような加工はこれまでうまくできなかった。これにより疎水性色素を高効率に吸着し,フィルター材料などへの応用も期待される。


繊維内部で相分離を引き起こす


極性が大きく異なる2種類のポリマー溶液を混合するとエマルションが得られる。エマルションを直接エレクトロスピニングすると,ポリマーが繊維内部で相分離する。この相分離の構造やサイズはもとのエマルションの分散度合いに依存する。

今回,2種類のポリマーとして,疎水性ポリマーのポリスチレン(PS)と,親水性ポリマーのポリビニルピロリドン(PVP)を用いた。繊維を得たあと,水で洗浄するとPVPのあった部分だけが除去される。

もとのポリマー溶液がエマルションであれば,芯鞘のような構造が得られる。これに対して,よく混じっている溶液から得られる繊維は,メソサイズの孔が空いた多孔質ナノファイバーとなる。このメソ孔は,もともとPVPポリマーが存在していた部分を洗浄で除去したものなので,互いにつながっている(interconnecting)のが特徴である。






参考文献

N. Asano, S. Sugihara, S. Suye, S. Fujita, Electrospun Porous Nanofibers with Imprinted Patterns Induced by Phase Separation of Immiscible Polymer Blends. ACS Omega, 2022, https://doi.org/10.1021/acsomega.2c01798